一昨年(2015年4月)に閉館した新宿2丁目の老舗小劇場「タイニィアリス」。僕自身も何度か足を運んだことのある劇場でした。
その劇場跡地に、新しい劇場を立てるためのプロジェクトが立ち上がっています。しかも、クラウドファンディングで、資金を集めるとのこと。色々と思うところもあり、クラウドファンディングに初めて手を染めて(という言い方は大げさですが)、支援金を振り込んでみました。
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特徴のある劇場だったタイニィアリス
地下に位置する劇場は、まさにアングラ感がいっぱいで、上演される劇も(例外はあるものの)アングラ色の高いものが多かったように思います。演劇感想文リンクの劇場別ページのタイニィアリスのページには、実に139の公演記録があります。(1987年自転車キンクリート「シンドバット・ハイヌーン」〜MAY「零度の掌」まで)
上演している劇団も、錚々たる面々揃いで、劇団離風霊船(名作ゴジラの初演は、この劇場)、花組芝居、プロジェクト・ナビ、少年王者舘、ク・ナウカ、星屑の会、シベリア少女鉄道、ゴキブリコンビナート、池ノ下、鹿殺し、ダルカラ(DULL-COLLORED POP)、上海太郎舞踏公司、劇団印象、月間「根本宗子」、超歌劇団等 懐かしかったり、癖が強かったり、超人気劇団だったり本当に小劇場史を語るうえで欠くことのできない劇場でした。
上記以外にも、足を運んだことはありませんが、海外(主にアジア)の劇団を招いてのアリスフェスティヴァルも印象的なものでした。
その劇場も、老朽化等に耐えられず2015年4月に閉館を迎えました。
劇場の2016年問題はまだ終わっていない
実は、いわゆる小劇場ブーム、アングラ劇ブームの1970年代あたりにできた劇場はこのような耐震等の課題を抱えていることから、数々の劇場が2015年前後に閉館に追い込まれました。昨年のはじめには、2016年問題として、このブログでも取り上げました。
相次ぐ劇場の閉鎖に、東京は劇場不足の真っ只中
前掲の記事では、割りと大箱の劇場の閉鎖に伴う、小劇場への波及を心配しましたが、小劇場そのものの閉鎖もけして少ないわけではなく、ここ数年で10個の劇場が閉鎖しているそうです。 耐震等への備えとして、例えば補修工事等を行うことも考えられるかもしれませんが、劇場の経営そのものは、けして楽なものではありません。昨年、ネーミングライツの販売という新しい手法で、経営のテコ入れをした花まる学習会王子小劇場のような例も出てきていますが、そこで上演する劇団同様に台所事情が苦しい小劇場が多く、結果として閉鎖に追い込まれる例もありそうです。
観客としてできることは、あるのか?
勿論、そのためには、観客として少しくらい高いチケット代でも文句を言わずに劇場に通う…というのがまっとうなのはわかります。しかし、中々実感しにくい。
と思っていたときに見つけたのが、以下の記事でした。
「タイニイアリス跡地を新劇場に!クラウドファンディングによるプロジェクト始動」(ステージナタリーより)
2015年4月に閉館したタイニイアリスの跡地を利用し、劇場を復活させるプロジェクトが始動。そのための資金を、個人の早坂寿氏がクラウドファンディングサイト・Readyforにて募っている。
小劇場ブームの最盛期に、東京・新宿二丁目に誕生したタイニイアリス。以来30年ほど若手の登竜門として、新宿梁山泊の金守珍、少年王者舘の天野天街、燐光群の坂手洋二ら数多くの演劇人を輩出した(中略)早坂氏がその文化を存続させようと、新劇場・スターフィールドを立ち上げることを目的に行われるものだ。
支援は、2月28日23:00まで受付中。
プロジェクトのページは、こちら⇒「新宿二丁目、劇場「タイニイアリス」跡地に新たに小劇場を作る!」
かつて小劇場の舞台を見ることで救われた個人の早坂 寿さんが個人で立ち上げたプロジェクトです。
小さいとはいえ、人の人生すら立ち直られる力のある小劇場演劇に魅了され、なんとか恩返しをしたいと考えるようになり、今回小劇場の復活に携わることになりました。
残り日数は、52日とはいえ、まだまだ、500万円の目標に対して、23%の118万円の支援が集まっているのみ。
早坂さんのように、小劇場の舞台に元気をもらったり、夢を追ったりする観客の一人としてこのプロジェクトに共感をしました。
小劇場/演劇を見る側から支える活動の一つとして、このクラウドファンドの成功を祈りたいと思っています。
おまけ:クラウドファンディングって面白い
過去にも、演劇系のクラウドファンディングについて記事にしたことがありました。
そこで紹介しているMotionGalleryは、アート系のクラウドファンディングプラットフォームで、演劇制作や映画製作についてのファンディングが常にあがっています。
こういうのも興味深いのですが、今回は形に残る「劇場を作る」というプロジェクトの大きさに引かれてまた記事にしてみました。 ReadyForは、別にアートに限ったものではないため、他にも興味深いプロジェクトが色々ありました。こういうサイト、一過性の興味ではなく継続的に見て情報収集することも大事だなと思いました。