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[劇評]劇団SHOW特急「悔いのない人生のすゝめ」@バビロン流れのほとりにて

学生演劇を髣髴とさせるような脚本で、ストーリー、設定、キャラクターのすべてがありきたりで、あまりに工夫がない。基本的に、あまり関係がない人が集まってそれぞれのエピソードをつないでいく形式は、個人的には好きでないこともあり、100分間の時間を見ている側としてはもてあましました。

劇団 劇団SHOW特急
題名
公演期間 2016/09/062016/09/11
作/演出 伊達謙一
出演 (Aチーム)
宮上コウ(姉と喧嘩したまま事故死):NoRA
荻原リョウタ(野球少年も白血病死):折浜かじき
刈谷崎ユカ(女子高生自然死):山下まゆ
エリー(120年さまようガイド):工藤そのか
宮上ミツキ(コウの姉):山田真以
マサフミ(ミツキの彼):眞田規史
受付:押尾江里子
小野寺ケイイチ(中学時代からのエースピッチャー):中尾洋太
シンヤ:竹内蓮
ジョー(野球部の守護霊):外崎翼
乞食(ずっとさまよい続ける):原田達也
劇場
シアターバビロンの流れのほとりにて(王子神谷)
観劇日 2016/09/11

目次

物語

突然、自分が思っても見ない見知らぬ場所にいることに気づいたコウ、リョウタ、ユカは、自分たちが既に死んでしまい、死者の世界に来てしまったことに気づく。お互い知らないもの同士でありながら、高校生だった彼らは、果ての世界に行って魂をリサイクルする前に、自分の人生の悔いになっていることを確かめるために、その地で知り合ったエリーに案内されてもう一度下界へと旅たつ。

感想

■昨年とは打って変わってファンタジー

昨年は舞台装置も衣装も殺陣もかなり本格的な時代劇でとして「真田十勇伝」を見せてくれた劇団SHOW特急が、今年も池袋演劇祭に登場するということで、審査対象作品ではないのですが足を運んでみました。
まったく作風の違うファンタジーということもあり、期待半分、不安半分で劇場に向かいました。
結論からいうと、不安に思っていた部分が軒並み的中してしまった印象でした。

■安易な設定と物語

舞台設定は、突然死んでしまった高校生が目覚めた死後の世界から始まります。事務的に順番待ちさせられたり、パンフレットが配られていたり、受付の人がランチ休憩をとったり、一般的にイメージする死後の世界とはだいぶ様相が異なる世界になっていますが、死後の世界に目覚めて、現世に未練があっていろいろ画策する話ってそれほど星の数ほどあって、その中でこの芝居特有のユニークさのようなものを見出すことはできませんでした。
見始めてすぐ思ったのが「なんか学生演劇みたいな脚本だなぁ」という感想。うん十年前に学生演劇をやっていた身としては、共感を感じる一方で、けっこう安易にみえてしまったのは事実です。(見終わった後に、この劇団の第1回の上演作の再演だったことをしりました。もしかしたら、本当に学生演劇としてかかれた作品なのかもしれません)

大人のみる作品として成立するためには、せめて
・なぜ、そこに高校生ばかりがあつまっているのか?
・本当はもっとたくさんいるはずの年老いた人々はどうなっているのか?
あたりに、何か説明をつけてほしかったです。同じテーマを扱うにしても、エピソードのすべてが高校生の話というのは、構成的にいけていないと思いました。

また、(一瞬ですが)作り手の立場にいた自分としては、こういう個別のエピソードを重ねた物語の作りやすさ(脚本の書きやすさ、練習のしやすさ)みたいものがなんとなくわかってしまい、安易な方向に走ってしまってると感じました。(誤解かもしれませんが)

■ファンタジーだから何やってもいいわけじゃないだろう

むちゃくちゃな舞台設定を持ってきて、「ファンタジーだから」と言い切るのはそれはそれで嫌いじゃありません。タイムマシンにしろ、霊魂にしろ、剣と魔法と同じレベルのファンタジー要素なので、そこに科学的な解説をもとめたり整合性を求めるのは野暮だというのはわかっているつもりです。また、ご都合主義の物語を批判するのも野暮だとは思っています。

それにしても、物語の最初のほうで自ら課した制約くらいは守って物語をつむいでほしかったなと思いました。
死んでしまった以上は、もう現世に何もしてあげることができないとか、どんなに話しかけても話が通じないとかそういう制約が、たいした事件も努力もなく、都合のよいときだけ可能になってしまうという話しの進み方は若干げんなりしました。

一方で、舞台装置もそうですが全体に作りが地味でした。ファンタジーらしい、魅せるシーンもなくて、都合のよいところで、都合よくことが運んでいくというのがきにいりませんでした。(何ももてないはずの幽霊が、姉に手紙を書いて見せたり、部活の友達に何も伝えることができないはずの幽霊が、突然会話ができたり…)

■役者さんも印象に残りにくい芝居でした。

若干、棒読みに感じる役者さんもいたこともあり、全体に好印象を持つことが難しかったです。中には、キャラによくはまっている人もいたのが救いといえば救いですが、演技も表面的な演技に終始している感じがありあまり心に残りませんでした。

感動的になりそうなシーンはいくつもあり、客席もそれなりに盛り上がっている(泣いてる)シーンでもあったのですが、私自身はちょっと入り込むことができませんでした。心底、役になりきっている人が舞台上にみあたらなかったのが原因な気がしました。

 

<追伸>

劇場「バビロンの流れのほとりにて」は、劇場名が印象的だったので是非一度行きたい劇場だったので今回行けて良かったです。なんか、街の雰囲気含めすごいところにある劇場だなと思いました。

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