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[劇評]チャリT企画「パトリオット」@シアタートップス(新宿三丁目)


2025年6月28日(土)マチネ、新宿シアタートップスで上演された劇団チャリT企画の舞台『パトリオット』を観劇。戦後80年の日本における「戦争と記憶」を問い直す、重層的でポップな風刺劇でした。不可思議なエレベーターから南方戦線へとつながる物語構造に、強く心を揺さぶられました。


劇団 チャリT企画
題名 パトリオット
公演期間 2025/6/252025/6/29
楢原拓 演出 橋本昭博
出演者 森田ガンツ:市民1(三代目オーナー)
みずき:市民2(ユーチューバー好き青年)
堤千穂:市民3(ブーンブーンという羽音に追われる女)
市原一平:市民4(ブーンブーンという羽音に追われる男)
米村真理:市民5(トトの飼い主)
内海詩野:母(地下一家)
阿比留丈智:父(地下一家)
埴生雅人:ハッサン(地下一家長男)
笹野鈴々音:アーヤ(地下一家の娘)
本宮真緒:エレベータガール
熊野善啓:兵士
劇場
シアタートップス(新宿)
観劇日 2025年6月28日(マチネ)

目次

劇団との再会 ― 8年ぶりのチャリT企画

この劇団を観るのは2017年6月の『キョーボーですよ』以来、実に8年ぶり。当時の印象としては、社会的なテーマをパロディやコミカルに描く風刺劇団というものでした。

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その作風には惹かれた一方で、思想的な主張の伝え方が自分にはやや強く感じられたこともあり、以降は少し距離を置いていました。ブログを振り返ってみると、劇団とは直接関係のないトラブルも重なり、印象が悪くなってしまっていたようです。

今回はたまたま東京滞在中で公演の選択肢が少なかったこともあり、「そういえば」と思い出しての観劇。タイトル以外の予備知識はなく、ほぼ白紙の状態で劇場に足を運びました。

舞台構成と物語の世界

新宿の雑居ビルから始まる“深層”への旅

物語は新宿の雑居ビルの地下から始まります。停電とテロのような事件により、地下室に避難してきた人々が、「下にしか行けないエレベーター」を通じて謎の階層へと導かれます。

やがて、森田ガンツさん演じるビルのオーナーの過去を軸に、物語は第二次世界大戦の南方戦線へと接続されていきます。ガダルカナル島など、日本軍の極限状況が描かれ、それが現代とポップにリンクされる展開には驚かされました。

多層的な登場人物たち

現代を生きる登場人物たちの役どころはそれぞれに異なり、ミズキさん、堤千穂さん、市原一平さん、米村真理さんらの人物造形が際立っていました。

若者たちの“影響されやすさ”の描写はやや一面的にも思えましたが、それもまたこの作品における一つの意図と解釈できるかもしれません。

劇場の“場”を生かした終盤演出

物語終盤、「地下一家」と呼ばれる存在が現れ、物語の抽象度が一気に上がります。観客として「どう終わるのか」と見守っていた様々な謎が解けていき終わりました。
最後に、実は舞台となっていた空間が地下ではなく“4階”だったと明かされる瞬間がありました。

シアタートップスの実際の非常階段を使った演出は、まさに現実と劇世界の境界を崩す“屋台崩し”的手法で、劇場という空間の特性を最大限に活かしていたと思います。
(個人的には、唐組のようなテント芝居が観劇の原点なので、こうした“場”を使う演出はとても好みでした)

印象に残った演技とモチーフ

久しぶりに彼女を見て「可愛いな」と感じつつ、気づけばベテランの域に達しているのだなと、感慨深い思いもありました。
笹野さんを前回見たのは(舞台では)、なんと20年前でした😱

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そりゃ、ベテランだよな….

余談と後味の余白

前回この劇場で観た別作品でも「雑居ビルを相続した男性」が主人公でした。今回の設定も同様で、奇妙な偶然に少し笑ってしまいました。シアタートップスで舞台をやると、“雑居ビル”が出たくなるのかもしれません。

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ただ、最後の場面で、堤千穂さん演じる中年女性以外の登場人物がすべてを忘れているような演出には、戸惑いもありました。あの場面をどう解釈すればよいのか、今も考え続けています。

以上 2025年6月に見た舞台チャリT企画「パトリオット」の感想でした!

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