唐十郎の状況劇場時代の名作の新宿梁山泊バージョン。とはいえ、いつも不満に思う物量作戦的な演出はなく、劇場のスタイルもあって、よりテント芝居的な(あくまで物質面では)押さえた演出。
全般には、脚本の求める毒が、完全に表現しきれていないのではないかという不満(といっても状況劇場版を見ているわけではないのでなんとも言えないが)が残った。
劇団 | 新宿梁山泊 | ||||
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題名 | 吸血姫 | ||||
公演期間 | 2000/11/10~2000/12/03 | ||||
作 | 唐十郎 | 演出 | 金盾進 | ||
出演 | 金守珍、大久保鷹、稲荷卓央、小檜山洋一、梶村ともみ、近藤結宵花、もりちえ、岩村和子、渡会久美子、三浦伸子、大貫誉、原昇、李秀子、松岡哲永、尹 秀民、堀田誠 | ||||
劇場 | 芝居砦・満天星(東中野) | ||||
観劇日 | 2000年11月25日 |
物語への演出としても、引越し看護婦(近藤結宵花)と肥後(稲荷)の間の愛情関係がうまく表現されないまま、芝居がつっぱしってしまい、二人の愛情が要になるラストシーンにうまく繋がらなかったように思う。
それから、これはもう状況劇場の芝居を屋内でやると必ず感じる不満だけど、ラストシーンに劇場の向こうが空いてもなんか寂しさが残ってしまう。誰か、このジレンマをなんとかできないもんだろうか
梶村ともみさんの狂気の看護婦は、梶村さんの印象が変わってしまう程の完全にいってしまった演技。若干、見ているこっちが引いてしまうほど。しかし、演出意図からすれば申し分ないできかなと思う。
唐組から客演の稲荷さんは、今回も熱演。梁山泊の男優に毒のない人が多い中では、彼のパワーが救い。唐の芝居の毒をうまく取り込んだ演技だったと思う。
近藤さんは、いつもの演技。あまり意外性もなく、やむなしかとも思わせるが、この役をやるには毒がなさすぎるのかもしれない。確かに看板女優になった迫力はあるが、かわいいという印象がぬぐえない。
大久保さんは、いつもの通り。復帰後は見るたびにちゃんと演技をするようになっている。(失礼か)とにかく、彼が出ていると芝居が締まるものを感じる。但し、周りが少し彼の演技に圧倒されているような気がするのが気がかりといえば気がかり。
実は、公演が終わって一番耳に残っているのは、看護婦2の岩村和子の「いいわぁ」という声。彼女はほとんどこの科白しか口にしなかったけど、その言い方がなんとも悩ましくて印象に残った。
劇場自体はとてもよくできていて、好印象。ちょっと駅から遠いし、墓場の横を歩いていくという劇場までのコースは夜の公演だとどうかなと思うけど、結構好きなロケーション。芝居の内容はともかく、また足を運びたい劇場だった。