すごくよくできた喜劇。芸達者の二人(ベンガル、綾田)に囲まれて演技する熊谷真美が本当に楽しそうに芝居をしていたのが印象的だった。
劇団 | ベンガル・綾田プロデュース | ||||
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題名 | 21世紀版 質屋の女 | ||||
公演期間 | 2001/03/22~2001/04/01 | ||||
作・演出 | ベンガル/綾田俊樹 | ||||
出演 | ベンガル、綾田俊樹、熊谷真美 | ||||
劇場 | ザ・スズナリ(下北沢) | ||||
観劇日 | 2001/03/31 |
<<ストーリー>>
質屋の主人(綾田)は、年の離れた妻(熊谷)が毎日うちを留守にするのを心配して私立探偵(ベンガル)を雇う。しかし、主人の疑いとは裏腹に、妻に浮気の事実はなく、二人のお互いへの思いがすれ違っていることが判明する。私立探偵はそんな二人に言葉によるコミュニケーションではなく、無言でのコミュニケーションでお互いをもう一度分かり合うことを薦める。丁度、尾行中の探偵と妻の関係がそうであったように….
<<感想>>
再演らしいのですが、清角は、前回の公演を見ていません。熊谷真美さんの役が別の人だったらしいのですが…(あくまで伝聞情報) (あ、野獣郎と始まり方が同じだ…)
脚本もとてもいいのだが、この芝居の出来は圧倒的に、役者たちの力量に依存している。年老いた堅物の質屋の主人の綾田さんも、怪しい私立探偵のベンガルもすごくはまっていていい。何よりもすごいと思ったのは、28歳の役を無理なくこなしている熊谷真美に驚いた。妹が、テレビでお母さん役をやっているような人なのに(関係ないか)
三人芝居で、三人三様に見せ場があって、時間を忘れることができる。特に、綾田さんが語る瀬戸内の孤島を舞台にした映画の説明のシーンは、笑い転げたし、ベンガルさんの変なおじさんの雰囲気は、全部地じゃないだろうかと疑いたくなるほどおかしい。
熊谷さんが、芝居の最中にニコニコしているのも、なんかこっちまで心が温かくなってくるような気がする。あのニコニコ顔はきっと、地の熊谷さんが出ていてそれが客席に伝わってくるんだろうなぁと感じた。その雰囲気がまた、少女っぽいというか若い女性特有のものを思わせて、完全に熊谷さんの年を忘れた。(あまり女優に年々いうのも失礼だが)。
実際、見ていてほのぼのとしてくる楽しい芝居だった
これだけ誉めておいてなんですが、一つだけ不満。
全体の五分の四くらいまでは、実は純粋に楽しめたのですが、最後の畳み掛けがどういうわけか胸に迫ってこなかったのです。
なんでだろうとつらつら考えるに、どうもベンガルさんの芝居がしっくりこないんだということに気づきました。
最後のあたりで、熊谷さんと綾田さんの二人を説得するあたりで、それまでと同じ変なおじさん的演技が逆にあだになってものすごく違和感があるのです。「なんでこんな変な人の、それほど説得力のない話に説得されちゃうの?」という思いが見ている僕の中に生まれてしまうのです。
もしかしたら、悪いのはベンガルさんではなく脚本なのかもしれないのですが、どうしても最後の二人の夫婦が説得され尾行ごっこをするという部分が納得して見ることができなかったのです。もっと、ベンガルさんが熱心に説得しその熱心さに心打たれれば…あるいは、夫婦が誰でもいいからそういうきっかけを与えてくれるのを待っていたというふうにもっと見えれば….違った感じ方をしたのではと思うのですが…