[劇評]大森カンパニープロデュース「トコトン、いじはり」＠小劇場B1(下北沢)

[劇評]とことん、イジハリ

再演ですが….

2018年（これも実は再演作だったようですが）に見た作品の再演ですが、キャストはかなり一新されています

[劇評]大森カンパニー「いじはり」＠小劇場B1(下北沢)

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特に、ヒロイン役の依里さんと日舞の家元役の三宅さんにあたるキャストをオーディションで選び直したのは、かなり冒険的な試みだなと思いました。
もともとこの劇団の舞台は、宛書きされているし、三宅さんに至っては小劇場で他に例をみたことがない役者さん（日舞の師匠が本業）で、オーディション募集されているときにも、日舞経験者が本当に
やってくるもなのか🤔と少々懐疑的でした。
結果、喜多村さんが参加されていて、新しいいじはりが完成していました（依里さんは別役でちゃんと登場）

再演ではありましたが、配役も増えて、随分にぎやかな舞台になりましたが、冗長になったりするところはなくとても楽しめました。

変わらないキャストが変わっていること

初演は、2016のようですが、私が見たのは5年前の再演版。そこからであっても5年経っています。おじさんキャストたちの年齢は重なることで、色々無理がでてきているように思いました（その無理が面白いのも事実ですが）

とくに、顕著かなと思ったのが、坂本あきらさん
御年74歳の坂本さん、最近の作品では少々穏やかな役が多かったのですが、この作品では、初演が結構前ということも有りなかなかの大活躍（個人的にはほぼ主役）
セリフも多いし、最後にはアクションシーンにも参加。
若いヒロインの思いを受け止める役ということもあり、感情の起伏も激しい。
それだけでも楽しいのですが、なんか色々舞台上でやらかしていらっしゃるようで、様々な事件が舞台上で起きます
お茶がこぼれたり（横山さんのせい？）、反社といおうとして、「ほん」から始まったり、なぞの沈黙があったり….
正直、全て演出/脚本かもおもったりしつつ、いや違うのか🤔と思ったりしつつ、緊張感がたまりません。

思えば、三湯士という三人のキャスト、大森さん、山口さん、坂本さんのいずれも60歳超え。ストーリーの設定とのギャップもあるように感じました（5年前初めてみただけにそういうことは思いませんでした）

変わらないキャストで変わらないこと

一方で、横山さん、岩田さんという中堅のキャスト陣は変わらず、芝居のテイストを維持し続けてくれています。
特に岩田さんは、かなりのイケメンでありながら、この舞台では悪役です。
ただ、スーパー銭湯の社長が、悪役という設定のギャップと、なんかかっこいいのに、コミカルな動きを強要されている感が醸し出すギャップが相まって、憎みきれません
最後の乱闘シーンのあたりのやり方はともかく、ビジネスマンとしては必ずしも間違ったことを言っているわけでもないし、少々共感しながらみていました
このあたり、5年前の舞台の様子を思い出すとっかかりになってくれました。横山さんの舞台の大きさに見合わないダイナミックな動きのダンスも圧巻（でも、なぜか笑える🤣)

一新されたキャスト陣

5年前に見た舞台で出演されていなかったキャストの方の活躍も目覚ましかったと思いました
及川奈央さんは、大森カンパニーの常連といっても良い女優さんで、7年前の初演（私は未見）でも同じ役をされていたらしく、安定感のある演技でした。5年前の遠山さんの演技が儚げなものだったように記憶をしているのですが、
及川さんの場合、もともとの明るさのようなものが見え隠れして、より傷ついた女性の存在感がぐっと来ました。

美鈴役、拓真役の二人の銭湯で育てられた子供の役の二人は、今回のキャストオーディションでの選抜されたお二人。
ういういしですが、アクション等もしっかりこなされていて頼もしい感じでした

かなりの大乱闘

今回圧巻だったのは、ほぼ全出演者（なんと山口さん、坂本さんも！）が絡む大乱闘シーン。
なによりも、そんなに広くない舞台を全面に使い、この人数が戦うというのはかなりの迫力です。相当に練習が行われないと難しい技なんだろうなと思いました
今回は、最前列という相撲で言えば砂かぶりにちかい位置で観劇（観戦？🤣）したおかけで、その芸の細かさに感動しました
坂本さんのアクション、坂本さんがすごいというよりも、その相手をする役者さんが、坂本さんがすごいように魅せるアクションがすごい。今回だと、初出演で最年少19歳の国井さんの身軽さが際立っていました

銭湯懐かしいな

広島に引っ越してきて、あらためて東京の銭湯の短さを懐かしいなぁと感じました。
住んでいる地域の問題かもしれませんが、東京ほど身近に銭湯のない生活になってみてこの物語の舞台であるような下町銭湯にあらためて訪れてみたいなと感じました。

当日パンフ無料版の充実もうれしい

芝居の内容に関係はあまりありませんが、カラー版の当日無料パンフ、とてもありがたいです。
いつの頃からか、芝居にいっても、配役さえ当日の有料パンフを買わないと確認できない舞台が増えてきているなかで、ここまで充実したパンフがあると開演前の芝居への期待もたかまりますし、芝居後の楽しみも増えます

以上　大森カンパニープロデュース 「トコトン、いじはり」の感想でした！。