筒井康隆さんの原作は、読んだことがあったはずですがそれほど印象には残っていませんでした。しかし、舞台化すると五感の全てに響いてくる印象的かつ重い舞台になっていました。4人の配役の全ての人はハイレベルな演技でしたが、野田秀樹の独り舞台のような印象も強いです。 秋山奈津子さんの狂い笑い死ぬシーンが悪夢で出てきそう。
劇団 | 野田地図 | ||||
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題名 | THE BEE(日本バージョン) | ||||
公演期間 | 2007/06/22~2007/07/09 | ||||
原作 | 筒井康隆 | 演出 | 野田秀樹 | ||
出演 | 野田秀樹、近藤良平、秋山奈津子、浅野和之 | ||||
劇場 | シアタートラム(三軒茶屋) | ||||
観劇日 | 2007年7月7日(ソワレ) |
【ストーリー】
ごく普通のサラリーマンは、息子の誕生日のプレゼントを買い帰宅しようとして自分の自宅が脱獄囚に占拠されたことを知る。暴力的なマスコミ、無能な警察に痺れを切らし、その脱獄囚の家族を逆に人質に取ることになる…
【感想】
野田地図の公演は割とかかさずみているのですが、番外公演は見損ねているものが多いです。見たくないわけではなく、会場キャパが需要を満たしていないせいか、チケットが取れないことが多いのです。今回は、ネット上でそのことをこぼしたところ、譲っていただくことができて幸運にもみるできました。
本公演と違い小編成であるせいかもしれませんが、今回は野田秀樹の一人舞台の印象が僕には強かったです。原作の筒井さんは基本的には一人称でストーリーを進めるものが多く、この原作もそうだったせいか、主人公を演じる野田さんの語りと演技に引き込まれました。
演出としても、グーパンチ(?)でつきつけるマイクを示すことで、被害者感情に突き刺さるマスコミ対応の暴力性を表現したり、原作にはない蜂を登場させることで、主人公のテンションの変化を視覚的に表現したりと野田さん特有の抽象化された演出がさえていたと思いました。
コンドルズで有名な近藤良平さんは、思った以上にいい役者さんでした。久しぶりの共演になるであろう浅野さんどこか飄々としていて頼りない刑事役に見事にはまっていました。
割と男っぽい役がいままで多かったように思う秋山さんも色っぽいストリッパー役がはまっていました。僕の原作の印象からいうともう少し弱い女性像の方がこの原作にはあっている気がしましたが、最後に笑いながら死ぬシーンは本当に夢に出てきそうな悲壮なもので、秋山さんでないとできないものだったと思います。
全体的には、最近の「語りすぎる」感がある本公演に比べると話はわかりやすい一方で主張らしきものがなく単純に楽しめる(心楽しい舞台ではありませんが)舞台であったと思いました。