チラシに書かれたこの公演の案内(ストーリー)があまりにも面白そうだったのですが、その期待を裏切らない傑作でした。戦後の話というイメージから来る暗そうなイメージが主役二人の円生と志ん生で面白おかしく変えられ、それでいてジーンと来る作品でした。
劇団 | こまつ座 | ||||
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題名 | 円生と志ん生 | ||||
公演期間 | 2007/11/14~2007/12/02 | ||||
作 | 井上ひさし | 演出 | 鵜山仁 | ||
出演 | 角野卓三、辻萬長、塩田朋子、森奈みはる、池田有希子、ひらたよーこ | ||||
劇場 | 紀伊国屋サザンシアター(新宿) | ||||
観劇日 | 2007年12月1日(ソワレ) |
【ストーリー】
国民的はなし家、円生と志ん生。 うちひしがれた戦後の日本人を心底笑いで励ますことになるこの二人の大名人は、敗戦のときを満洲南端の都市大連で迎えていた。 ソ連軍の侵攻と同時に大連は封鎖され、日本国からは見捨てられる。 二人がふたたび祖国の地を踏んだのは、じつに六百日後のことであった。(ちらしより)
【感想】
円生と志ん生といえば、落語に疎い僕でも知っている昭和の大名人。その二人が終戦前から戦後にかけての大連で一緒にいて、日本に帰ってくるまで大変な道中を送った物語。チラシでそういうのを読んで何としても見たいと思っていた作品が再演。ようやく見ることができました。
こんなに期待が高いと見終わった後に不満が残りそうなもんですが、ほとんどありませんでした。またあったら見たい作品に確実にひとつ加わりました。
角野さんは、三谷さんの舞台なんかで見るときはどっちかというと堅物で律儀な人のイメージでしたが、今回は博打好きで酒好き、どうにもうまく立ち回れない志ん生を見事に演じています。ちょっとイメージ変わりました。
辻さんは恐らく初めて見た役者さんですが、歌も上手くて達者な役者さんだなぁと思いました。
本当のところ、戦後の大連なんてもっと悲惨だったのだと思いますが、重苦しくなりそうな雰囲気をふたりの落語を題材にした掛け合いと音楽でとても軽やかなものになっています。
志ん生をキリストと間違えてしまうラストシーン近くの修道院の話は個人的にはツボにはまりました。 拡大解釈すれば、どんな会話もキリストの言葉に思えてしまうというのは、ある意味示唆に富んでいると思いました。
ちょっと、最後の日本に帰れるシーンがあっけなかったかなとも思いましたが、とても楽しい気分を味わい、かつ名前しか知らなかった円生と志ん生について、ちょっと興味をもった作品でした。