男くさい任侠ものになってしまいそうな話が、水谷さんの手にかかると出演者の全ての裏にある普通の生活が垣間見える話になるから不思議。新納さん演じるアシバーの成れの果てと自ら語る主人公のかっこよさがこの芝居の真骨頂。もっとこの主人公二人の物語を見たいと思った。
劇団 | 今井事務所 | ||||
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題名 | アシバー | ||||
公演期間 | 2003/01/24~2003/02/02 | ||||
作/演出 | 水谷龍二 | ||||
出演 | 朝倉伸二、坂田雅彦、中野若葉、新納敏正、小林美江、渡辺哲、江端英久、平良政幸 | ||||
劇場 | ザ・スズナリ(下北沢) | ||||
観劇日 | 2003/2/1(マチネ) |
<<ストーリー>>
社長が夜逃げした事務所に、ヤクザものが取り立てのために居座っている所に、二人の便利屋が現れる。社長の居所を専務に聞き出そうと手荒なことをするヤクザに二人の便利屋はやり過ぎないようにうまくコントロールしながら結局専務から社長の居所を聞きだす。これで一件落着するかに見えたが、専務の不倫だの、ヤクザものが別の組で金を持ち逃げしたことがひょうなことからわかっていき….
<<感想>>
もともとヤクザという組織だったものは、沖縄にはいなかった。ただ「アシバー」と呼ばれる遊び人だけがいた。今は本土からヤクザが来るため、アシバーたちも組織化し、沖縄にヤクザが生まれた。
そんなせりふが舞台上で語られ、主人公二人の素性がほのかに語られる。組織に属することのない「アシバー」の成れの果てであり今は便利屋だと。
新納さんと朝倉さんの演じる勝ちゃんと浩ちゃんの二人の主役がむちゃくちゃかっこいい。その二人のかっこよさがもっとも印象に残る舞台だった。パンフレットによれば、最初は脇役として水谷作品に出たこの二人を水谷さん自身是非一度主人公にした話を書きたかったということだが、その気持ちはすごくよくわかるような気がした。
最初は、ヤクザものにありがちな社長が夜逃げした会社を舞台とした悪徳ヤクザとこの二人の対立がストーリーの中心になると思っていた。しかし、やがて一方的な被害者だと思っていた気弱な専務が不倫をしていて、事務員の女性がだまされていたことが判明したり、暴れ者のヤクザが、全国を逃げ回る弱者であったりと人間模様は複雑で、短い時間の間にそこにいる男たちの強みも弱みも全てさらけ出されていくあたりは、いつもながらすごい脚本と言わざる得ない。
観客としてみている側は常に期待を裏切られ、裏をかかれながら思わず舞台上のストーリーに引きづりこまれる。
主役二人を演じた新納さんや朝倉さんだけでなく、渡辺さんや客演の小林さんなどすごく魅力的な役者がこの舞台をよりかっこいいものにしているのは事実だが、相変わらず脚本と演出にしてやられたと感じる舞台であった。