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[劇評]Fuらっぷ斜「ウラノハタケニイマス」@WENZスタジオ

評価が非常に難しい作品だが、個人的な意見としては「中途半端」な感じが一番強い。不条理な芝居の世界を完全に作り出せるほど役者/演出の力が強くなく、ダンスのような動きも美しくない。宮沢賢治にあまり僕が思い入れがないせいで(かつあまり知らないせいで)かもしれないが、作品世界に入っていくことができないものであった。

劇団 Fuらっぷ斜
題名 ウラノハタケニイマス
公演期間 2003/03/06~2003/03/09
吉岡友治
出演 笑緒真利亜、影土優、川嶋泰士、岸田千鶴、鈴木晴美、吉田ミサイル
劇場 WENZスタジオ(西荻窪)
観劇日 2003/3/8(マチネ)

<<ストーリー>>

「春と修羅」(宮沢賢治)の世界を基にした七編の境目が曖昧なストーリー。

<<感想>>

4年ほど西荻窪に住んでいたことがあるにもかかわらずこの劇場は初めて。そのため、劇場の中が予想以上に広いのに驚いた。その中央に少し盛り上がった舞台。舞台上には土と石。劇場内に土があるとそれだけで少し緊張し、また同時に和んだ気分になるのは、何故だろうか。(だから、テント芝居に通うのかもしれないが)

土の舞台、水たまり、最後の雨と何か山水画のような雰囲気を持つ舞台は、他の舞台ではあまり感じることのできない和みの空間を演出している。いつも見るベニヤ板とパンチで形作られて抽象舞台とも日常生活の雑貨が整然と並んだ具象舞台とも違う劇空間は面白い。

しかし、舞台上の演技や演出はそのような劇空間にありながら、観客からあまりにも(物理的な意味ではなく心理的な意味で)遠いところで行われているように感じる。手足を何かに操られているように動かす役者のマイムも、何かに憑かれたような統一感のない踊りも、(少なくとも僕の)心の琴線に触れるものではなかった。
つかみ所のない舞台は過去に多く見ている。そのような場合、僕は映像的な美しさ(マイムやダンス、装置の華麗さ)をきっかけにその内部世界に入っていくことが多い。しかし、今回の舞台ではそれを得る事はできなかった。

場合によっては、せりふの中の一言が、僕をその内部世界に誘うきっかけになることもあった。しかし、多くは無言で演じられるこの舞台の中で、琴線に触れる一言を見つけることはできなかった。

何か、「これだけのことをやっている。後はそれをどのように感じるかはあなた方の自由ですよ」と突き放したメッセージが伝わってくるようだ。
だからといって、まったく見るべきものがなかったわけではない。装置をはじめとする作品世界の構築の試みは面白いと思った。

しかし、1時間半観客を惹きつけるにはそれだけでは不十分だと思う。

ダンス/マイム/セリフ/衣装/ストーリーそして何よりも演出が、何を観客に伝えたいかの明確な意識を持たない限り観客を退屈させてしまうことになってしまう。

当たり前のことだが、演劇は絵画とは違う。絵画であれば、観客は必要なメッセージを感じ取り退屈を感じれば、その絵の前を立ち去ることで、作品から必要なメッセージだけを受け取る事ができる。演劇は、1時間半の時間絶えず強烈なメッセージを発し続けるものでない限り観客は退屈する。

ダンスやマイム、前衛的な劇団(OM2とか)を見るときに感じないストレスをこの舞台で感じた理由はそんなところにあるのかもしれない。

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