計算され尽くされた演出、効果的な音、照明は、見ていて気持ち良く、完成された舞台としての印象が残る。それでも、芝居そのものを長く感じさせるのは役者の力量不足か。すべての役者が完全にその役を捕らえきったとは言えない為、破綻のない演出が帰って面白みのない印象を与える所が少なくない。
劇団 | 円・演劇研究所 | ||||
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題名 | ジプシー 千の輪の切り株の上の物語 | ||||
公演期間 | 2001/02/16~2001/02/18 | ||||
作 | 横内謙介 | 演出 | 福沢富夫 | ||
出演 | 内正和、山本葉月、早船聡、大窪晶、加藤大我、原田直樹、中村圭吾、川崎侑芽子、大貝充、萩原美智子、岩瀬真教、中島睦子、佐藤銀平、長瀬知子、平井智美、池田真由 | ||||
劇場 | 武蔵野芸能劇場(三鷹) | ||||
観劇日 | 2001/02/17 |
この「ジプシー」という脚本は、聞く所によれば、善人会議、扉座を通して最も多くの上演回数を誇る作品とか。また、そういう脚本であるからこそ、演劇研究所の卒業公演という場にもぴったりなのでしょう。(あきらかにバブルの時代を彷彿とさせる脚本でありながら、この脚本が今も選ばれているあたり、他に適当な脚本がないということを意味しているのでしょうかねぇ)
そういう意味で、脚本も素晴らしく、かつ演出も計算され尽くしていて、標準の出来にはなるべくしてなっている。また、役者達もその演出をうまく吸収していて小気味の良くかつ無駄の少ない体の動きや台詞回しが心地良く、安心してみていられる。練習を想像以上にしているのだろうなぁと感心した。
特にジプシー登場のシーンのダンスは儀式めいた不思議さと陽気さが絶妙なバランスで混ざっていて見ていて楽しくなった。
但し、役者の若さ(というか経験の少なさ)が、全般に芝居の印象を硬くしている印象は否めない。特に、土方役の三人組(加藤、原田、中村)は、完全に役に徹しきっているとはいい難く、作られた大騒ぎを必死で演じているという感じが非常に色濃く見えて、ちょっとだけ白けた。
彼らの線の細い印象(どうしようもないんだが)も手伝って、ジプシー家族を襲うシーンに迫力がかけ、結局脚本が要求している中盤からの盛り上がりをうまく作り出すことができなかったのは、残念。また、彼らが引っ張るべき前半も、その為に間延びがしてしまい芝居全体を長く感じさせる事になってしまった。
他の役者も、全般に無難に演技をこなしている印象が強く、破綻のなさが面白みのかける芝居になっている気がした。
パンフレットに寄稿している渡辺謙氏が、この公演を高校野球に例えて、「プロ野球以上の感動を人に与えることがある高校野球」という表現をしていたが、どちらかといえば、「四番打者でも一点の為に送りバントをさせるような教科書的な高校野球」を思わせる舞台だった。(勿論、高校野球的な感動もあったのだが)