シーンによる出来の落差が激しい芝居。目頭の熱くなるようなシーンがある一方で眠気を誘うようなテンポの悪さや内輪受けネタの大して面白くないギャグの応酬が多い。話の内容に比べて、出演者が多く結果として2時間強の芝居時間は長く感じたし、練習不足と思われるシーンが散見されたのは残念でした。(良いシーンは、本当に良かっただけに)
劇団 | 劇団だっしゅ | ||||
---|---|---|---|---|---|
題名 | DISASTER ~愛しきあなたへ | ||||
公演期間 | 2015年9月10日〜2015年9月13日 | ||||
作・演出 | 権俵冴造・権俵品吉 | ||||
出演 | 山口奈実、杉本長、西山紗弥加、鈴木克彦、堀内奈々子、原田絵理、田中恵子、平川A作、境太郎、大浪将行、羽深めぐ美、種野まき、保髙裕之、本庄美峰、星光明、氷室省吾、馬場康彰 | ||||
劇場 | 萬劇場(大塚) | ||||
観劇日 | 2015年9月13日 |
池袋演劇祭審査員として見に行きました(第2弾)
目次
■脚本は、稚拙に感じました。
枝葉がありすぎて、肝心の幹となる話が出来ていなかった印象でした。
南三陸の防災センターで起きた全国的にも有名な感動話をそのまま、ラストのクライマックスに持ってくるというのは正直あざとさを感じてしまいました。(僕が、その防災センターの後を訪れ、その話が強く印象に残っているからかもしれませんが。)
また、全体にバラバラの話がなんか統一感がない印象を感じました。脚本家が書いたというよりも、いくつかのシーンは、役者が自由に作ったのではないかと思います。その結果、物語がほとんど進まない、全体像から言えば無駄なシーンが多かったと思いました。
一方で、主人公が、津波からの退避を自らの命をかけて、市民にスピーカーで訴えかけ続けるシーンの唐突さにも、少々戸惑いました。
■演出にも、疑問がありました。
演出が効いているシーンと効いていないシーンの落差が激しいと感じました。(単に練習量の多寡がそのままシーンの出来を左右しているのかもしれませんが)
演出が効いていないシーンについては、基本的な会話のテンポが不自然で、芝居の体をなしていないと感じる部分がありました。
ラストの主人公の独白シーン。最初は、ちょっと目頭が熱くなったのですが、途中で冷めてしまいました。長すぎです。同じことの繰り返しが多すぎるし、何かセリフの中で語られる怒りの方向性も、また芝居内容とあまり関係がなく支離滅裂な気がしました。
■役者が多すぎ。
そもそも、ストーリーに比して出演している役者が多すぎて、結果として話がぼやけたと感じました。
しかもダブルキャストで演じられているため、想像するに、練習時間の確保はとてもたいへんだったのではないかと思います。その結果として、前述のような練習不足/演出不足のシーンができてしまったのではないと感じました。(私は、Aチーム/Zチームのうち、Zチームの方を観劇しました。)
■残念ながら魅力的な役者さんもあまりいませんでした。
良かったシーンは、友人の妹の堕胎を止めるという医学生の説得シーン。鬼気迫る感じの台詞回しを冷静に語る語り口と、感情を抑えた演技には目頭が熱くなりました。
そういう意味で、直人役の大浪将行さんの演技力は良かったと思いました。
それ以外には、「これ!」といった印象に残る役者さんがいませんでした。意外に自由に芝居をやってそうなのに、その自由さを活かしきれていない(魅力が十分に伝わってこない)感じがありました。
■でも、目頭が熱くなるようなシーンもちゃんとありました
最近、歳のせいか涙腺ゆるくなっていると感じているので、目頭が熱くなるシーン=良い芝居に自分的にはなりません。ただ、そういうシーンが作れる力量があるのに、全体が[イマイチ」な印象になってしまったのが残念でなりません。