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[劇評]流山児☆事務所「田園に死す」@ザ・スズナリ

寺山修司の映画の世界にとどまらず、詩や小説、舞台から彼の人生そのものまであらゆる「寺山モノ」を集大成した荘厳とさえいえるアングラ舞台。自分自身が一時期傾倒していたがゆえもあると思うが、舞台の場面場面からさまざまなものを連想し、芝居としてダイナミズムを感じて終わった後ちょっと言葉が出なかったほどの舞台でした。

劇団 流山児事務所
公演期間 2014/02/28~2014/03/10
演出 天野天街 天野天街
出演 大内厚雄、木暮拓矢、深山洋貴、眞藤ヒロシ、藤村一成、日下部そう、小寺悠介、阿萬由美、平野直美、坂井香奈美、伊藤弘子、沖田乱、小川輝晃、さとうこうじ、小林七緒、冨澤力、辻京太、酒井和哉、蒲公仁、飯塚克之、竹田邦彦、藤村直樹、柏倉太郎、山下直哉、小林夢二、田中伊織、中田春介、後藤秀樹、山丸莉菜、荒木理恵、石橋真珠、宮川安利、宮璃アリ、鶴田理紗、桜井玲奈、佐原由美、艶嬢さとみ、流山児祥
劇場 ザ・スズナリ(下北沢)
観劇日 2014/03/08

<物語>

青森、下北半島の田舎に生まれたシンジは、戦争で父をなくして母親とふたりきりの生活。田舎に嫌気が差し、逃げ出したいと思うごくありふれた思春期の少年だった。近所の本家には遠くから来た若妻がいて、彼に駆け落ちをそそのかす。近所には、日本全国を回っている見世物小屋が興行をしようとしているが、彼らは「人攫(さら)い」だという噂がながれる。

<感想>

27年前、18歳の時、友達の家でこの「田園に死す」を見ました。演劇部にいて、どんな芝居を作っていくかということに悩み議論をしていくなかで、先輩に貸してもらってみたはずです。ものすごく印象に残ったものの、それと同じようなものを目指すのはなんか違うと思いながら、4年間芝居をやって卒業しました。

「田園に死す」の舞台を見る前に記憶の中に残っていたの、ざっくりとしたあらすじと印象的なラストシーンだけのつもりでした。

始まってみると、そんなことはないということがよくわかりました。「田園に死す」で最初に触れていたものは、思った以上に僕の脳に侵食し、根を張り巡らしていたのです。学生時代に何度か脚本を書こうとして断念したことがありましたが、そのいくつかの本のシーンは、「田園に死す」の焼き直しでしかなかった事に気づきました。(書き終わんなくてよかったorz)

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また、そうしたシーンを改めて、この舞台で見ることにより、意味が読み解けた部分も多数ありました(つうか、18歳の時に見た時には、それをまったく意識していなかったんだなぁと思い知りました)

例えば、明智小五郎青年は、「大義」の為に女を捨てるところは、その捨てられる女の立場から見れば、「女一人を幸せにできない男が、何を国家か」と罵倒されるに値する残酷さを秘めています。

この元となった映画が制作された時期を考えれば、このシーンは、三島由紀夫的な国家観(あるいは、父を戦争に駆り出した国家そのもの)へのアンチテーゼとしての女の立場からの国家観/幸福論であったんだなぁと気づきました。

また、映画見た時は単に面白いなぁとは思ったもののその意味がまったくわかっていなかった空気女のところも、主人公が空気ポンプで空気を入れることでお腹が膨らむ(映画ではお腹だけではなかった気がするが)シーンも、セックスのメタファーだったということにようやく気づいた。

家にたった一つの柱時計を据えた青森の田舎に育つシンジが、一人ひとりが腕時計をしている都会から来た見世物小屋の人たちから受けるショックも、家父長制から個人主義に移行してきた当時の現実世界のメタファーとして語られていたのです。

この舞台は、そういう事を改めて感じ取れるほどに忠実に映画版を再現し、その劇世界に没頭できるほど演出が見事にされていました。

舞台装置から、細々とした小道具に至るまで実にきっちりと作りこまれ、手品のような完璧さで、場面転換が行われ、知らぬ間に大物の小道具が手に握られています。

歌、朗読、ダンス(?)等の役者の肉体を極限まで使い尽くした上に、照明、音響そして何よりも映像効果の利用により、舞台上の物語に幾層もの物語が上書きされていく感じで、クラクラするほどの臨場感がありました。アングラ演劇の凄みを改めて実感しました。

映画では、最後のシーンで壮絶な(と18歳の僕は思った)舞台崩しをやるので、そのシーンをどうやるのかなぁと思いながら終盤は、ワクワクしていました。あまりにも終盤が長い(一度終わったと思って拍手しちゃったし)ので、途中で飽きかけたのですが、まさかスズナリの中にスズナリを作るとは思いませんでした。意表を突かれました。

でも、だらだら引き伸ばされたあげくに、突然死みたいな終わり方で、ちょっとだけ消化不良でした。
いや、劇場でやるにはあれしかないとも思いましたが(テント芝居だときっと町の中にいくんだけど)

初演版のダイジェスト。ほとんど今回の演出と変更はないようです。

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