舞台の完結編からはや4年。まさかの映画化でした。観客は少なかったですが、ムード歌謡を歌う売れないおじさん(相当高齢化がすすんでいるが)たちと、多分孫くらい年齢が違う若々しい女優の「のんさん」の対比が面白くもあり、違和感もあり…
でも、夢を追うという共通の志の共有がすがすしく、終わったあとにほんわか温かい気分になれる映画でした
目次
夢を追う還暦のおじさんたち再び!
この映画は、星屑の会という劇団が20年以上前から上演している舞台シリーズ「星屑の街」を映像化したものです
初回の舞台は、 なんと1994年でした!
私が管理する演劇感想文リンクには、1994年の初演の情報はありませんが、1996年の再演の感想は読めます(キャストはほぼ初演と同じようです)
... 星屑の町 山田修とハローナイツ物語(1996) | 演劇感想文リンク - 演劇感想文リンク |
当時のチラシ(上記記事のアイキャッチ)、 皆さん若すぎてびっくりです
ちなみに、私自身はこのシリーズを知ったのは結構あとなので、この最初の舞台は見ていません。
25年前の舞台ですからねぇ、それが2017年に完結編でもうこのメンツに会えないのかと思っていたら、まさかの映画化。
売れないムード歌謡グループの皆さんも初演から26年を経てすっかり還暦を過ぎてしまっています(グループの一番の若手設定の有薗芳記さんさえも、59歳…)
そんな歳になりながら、売れることを夢見ていてというおじさんたちの悲喜こもごもは面白おかしくもあり、一方で悲哀もあります。
その辺の脚本の運びのうまさや、芸達者な役者さんたち(本来芸人というイメージが強い太平サブローさんや、ラサール石井さん、小宮孝泰さんも)の演技にも安心感があります
のんさんの加入による効果
のんさんは、言わずと知れた朝ドラで大人気になった女優さん。色々あって名前も変わりテレビで見る機会が減ってきていましたが、見事カムバックを果たし最近は見る機会が増えました
この映画では、歌手に憧れる東北の村の女性役。言葉も(おそらく)完璧で、純朴でも夢にまっしぐらな女性を爽やかに演じています
舞台でも、若い女性が座組に入ることがありました。(以下の完結編などでは、元モー娘。の新垣里沙さんが出演)
1994年から続く、ムード歌謡グループの話。面白くおかしいおじさんたちのステージ。22年の時を経てついに完結編。全部で七作品あるのですが、僕が見たのは2004年以降の3本。という状況なので、それほど語れるわけではないのですが...やはり10年ぶりに見ても面白い舞台でした。 [劇評]星屑の会「星屑の街 完結編」 | 演劇とかの感想文ブログ - 演劇とかの感想文ブログ |
でも、今回ののんさんの存在感はやはり群を抜いていると思いました。
自転車立ち漕ぎしながら、東北の風景の中で走る姿もぐっと来ましたが、 歌がうまい。
「恋の季節」を歌うときの昭和的なメイク/衣装の似合い方も良いのですが、かなり大人っぽい低音系のボーカルを難なくこなしているあたりも素晴らしかったです
この歌を歌っているときのカメラワークと演出もスキで、1曲の歌を歌っているのんさんを中心に回るカメラワークで、彼女を含むハローナイツが売れていくのがセリフや説明なしでわかる(客席が数が増えていき、やがてテレビ収録、レコード収録になるという)のが印象に残りました。
舞台でも、オリジナル曲があります(映画の中でも、印象的なのんさんと太平サブローさんのデュエットが聞ける「Miss You」がそうです)が、今回の映画ではのんさんが歌う新曲「しゃぼん玉」もとても声が清純で昭和の雰囲気がしてきました
戸田恵子さん、太平サブローさんの歌の巧さ
太平サブローさんの歌の巧さは、やはり健在ですね。
舞台版では、一時ハローナイツのボーカルを担当した戸田恵子さんは、前座としてハローナイツとは別に歌う役なのですが、こっちも歌がうまくて、歌を聞くだけでもお得な気分になれる映画です
芸能界の悲哀、夢を諦めないおじさん
小宮孝泰さんと菅原大吉さんの演じる兄弟の物語は、印象に残る話でした
農家を継ぐのを嫌って、東京で勝手をする兄貴(小宮さん)と、それに対して恨み言を言う弟(菅原さん)。
言い争いになるわではなく、それでいて両者が微妙にわかり会うあたり、リアルだなぁと感じたりしました
更にリアルだったのは、渡辺哲さんが話す売れない芸能人の話
夢が膨らみ、そしてしぼみ、惰性になって、気づけば他に何もできなくなっていく様を、芸能界を諦めさせるためにせつせつとのんさんに話すあたりは周りのハローナイツのメンバー(ラサール石井さん、小宮孝泰さん、でんでんさん)あたりの表情も含め見どころの切ないシーンでした
望郷篇!!!が5年後に舞台化!?
YOUTUBEを観ていたら、舞台挨拶ノーカットがありました。
これを聞いていて、おじさんたちがのんさんにデレデレであるのは、まぁ想像に違わなかったのですが、衝撃の事実がふたつありました。
のんさんに思いを寄せる青年団の青年で、菅原大吉さんの息子役を演じた役者さん、小日向星一さんという役者さんは小日向文世さんの息子さんだったということ(そういえば、面影はある)
そして 完結編を4年前に上演した舞台版は、5年後に「望郷篇」をやるとラサール石井さんが断言しました
ラサール石井さん、小宮孝泰さんは65歳、でんでんさんは75歳! どんな舞台になるのか、そして果たして僕は見ることができるのか楽しみです
以上 映画版「星屑の町」の感想でした
PS.丸の内TOEIの日曜の夜の回。600人くらい入りそうな劇場で、観客は20人に満たないほど。コロナウィルスの影響もあるかもですが、かなり寂しくもっといろいろな人に観てもらえればよいのにと思いました