実は、先日見て来た芝居での一言がきっかけで、思いついたことなのですが、劇評とは大分かけ離れた話になってしまったので、別記事にします。
そっちの芝居については、劇評を書いているのですが、そっちは故あってまだ公開できないので、先にこの記事をアップすることにします。
目次
■「スマホ撮影歓迎!」
それが、その一言です。過去にもそう言い切った劇団がありました。25年以上前の話です。
(勿論、当時スマホはないので、写真撮影という意味です)。
出演者は全員がサラリーマン。サラリーマンの余技でお祭り的にやってることを公言していたので、「記念になるのでどんどん撮ってください😀」的なスタンス。
それはそれで、はっきりしていて面白いと思った
今回は、それとは違うロジックで語られました。
■「拍手や笑い声のように、観客の感情の発露としてシャッター音を聞きたい。」
というのが、そのロジック。意外に演者にとっては特に絵にこだわる演出家にとっては正直な気持ちかもしれない。というか、劇場で観客が、舞台に対してその場でライブで感情を伝える方法ってホント限られている。
これが、コンサート会場とかなら、一緒に歌ったり、立ったり、座ったりする(ライブなんて何十年も行ってないからよくわからんが)とか、サイリューム振るとかあるでしょうが、劇場だと笑うか、稀に拍手から、更に稀に役者の名前を呼ぶか(唐組くらいしでしかみたことないが)…くらいしかない。
思ったこと、感じたことをじっと心に秘めて暗い中で舞台上を見つめ続けるしかない。そして、思いの丈(良いものも悪いものも、)終わった後にアンケート用紙に書き込む。知り合いの役者がいたりしたら、その後に一言二言語らう..くらい。
だから、(ちょっと変態的だが)シャッター音でもいいから観客のナマの反応を知りたいというのは、わからないでもない感情だと思った。
これって、実は相当不自由だし、他のエンターテイメントに比べてもだいぶ遅れている気がする。
■テレビは既にネットを取り込み始めている。
ニコ動なんかで、弾幕状にコメントを表示し、そのシーン、そのシーンに視聴者の反応が表示されるというインターフェースが現れてもう随分たつ。いまでは、ネットをテレビも取り込み始めている。
最近の一部のテレビ番組なんかのように、ツイートでダイレクトな反応が演者に伝わる。
一方で、演劇は、未だに「携帯電話」としてスマホを扱っているが故に、その電源を切ることを要請し、観客は目の前にいるのに、テレビより遠のいてしまっている。
演劇と似たような事を観客に強いてきた映画の世界でも、今や鑑賞中に声出しOKという事例がでてきている。
「『シン・ゴジラ』、発声可能上映の衝撃」
(前略)…会場である新宿バルト9はコスプレイヤーであふれ、上映は大盛り上がり。庵野秀明総監督がサプライズゲストとして登場すると、熱気は最高潮に。…(中略)…
「発声可能上映」という言葉を使い始めたのは、シン・ゴジラが初めてだ。このため、用語自体は広く知られたものではない。2015年公開の映画「マッドマックス」の「絶叫上映」、2016年公開のアニメーション映画「KING OF PRISM by PrettyRhythm」(通称:キンプリ)の「応援上映」などの系譜に当たるもので、こうした上映は最近になって広がりつつある新しい映画の鑑賞方法の一つである。
具体的には「声だしOK!コスプレOK!サイリウム持ちこみOK!」とシン・ゴジラの公式ページに説明がある通り、スクリーンに向かってサイリウム(ペンライト)を振るなどしながら声援を送り、観客が一体となり映画を鑑賞するというものだ。
演劇というエンターテイメントは、取り残されつつあるのかもしれない。
■双方向演劇の幻想
思えば、観客いじりや観客参加型の芝居というものを過去に見て、その多くは無残な結果だったと思っている。それでも、その目の前にいる観客の反応をダイレクトに舞台上に影響を及ぼすような作品に出会うと、(もっと上手くやってくれればなあ)と心の底では感じています。
うまいこと、説明できないし、イメージも貧弱ですが、スマホあたりを利用した演劇そろそろ出てきてもいいんじゃないだろうか。(電話かかってこないような、地下空間の劇場で、WiFiだけ飛ばすみたいな環境とかならば、スマホのスイッチ切らないでもいい芝居作れるような気がするのですが)
そこにいる観客によって、舞台上で出来上がるものが変わるような舞台…何か新しいものが生まれる条件は整いつつあるような気がします。