物語の展開や組立、役者さんに光るものがあった。一方で、安易な演出が随所に見られたが故に印象に残りにくい。結果、70分の上演時間に救われた。

劇団 | 劇団えーてぃーふぃーるど | |||||
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題名 | 314公演『蜜柑星人-或いは終末期的箱庭療法-或いは白と黒の深淵』 | |||||
公演期間 | 2018/03/28〜2018/04/01 | |||||
作 |
有賀太朗 |
演出 | 有賀太朗 | |||
出演 |
大西聖志 :医者 瀬口杏奈:幼馴染 有賀太朗 :父 高橋茉里 :母 飯川和彦 :男 根魏山リョージ :僕 水野以津美:姉 遠矢ひこの :助手 尚、男〜助手まではダブルキャスト。私が見ていない版は以下 浅川拓也 :男 須藤飛鳥 :僕 大島未来:姉 小板橋みすず :助手 | |||||
劇場 |
参宮橋トランスミッション(参宮橋)
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観劇日 | 2018年04月01日(マチネ) |
目次
前半が長い。
全70分なのに、前半が一時間くらいに感じました
問題は、医者役の大西さんの台詞がどうにも頭に入ってこなかったことでした
文語調の台詞を節を回しながら話す口調があまり好きではないのかもしれません
前半のメインどころ(というか、ほぼ彼と助手役の女性しか話していない)でありながら、この感じは結構きついです
しかも、キャラがイマイチ浅いのも気になりました
結果(多分最初の30分くらい)は、あんまり楽しむことができませんでした
逆に後半は他の役者のがんばりにより良くなりました
物語のメインが、箱庭療法をうける男(飯川さん)になったからかもしれません
彼の演技は前半後半の落差があり結構好きでした
目の演技が良かったです。前半ほとんど台詞がない中で、目の明るさや暗さが上手くコントロールされていて、感情の起伏が何となく伝わってきたりした
結構、大事な役で、この役がダブルキャストであることに終演後配役表を見てちょっと驚きました
出来によって芝居の印象が変わりそう
見ることができませんでしたが、ダブルキャストのもう一つの方だったらどうだったんだろうと思いました
後半のたたみかけが嫌いではなかったです
単純に練習量の差かもしれません。前半に比べると演出が効いていたように思います
前半只の書割状態だった、父親/母親/姉/僕の4人の演技が見えるようになったこともありますが、シーンとしての完成度が高くなっていました
俳優陣は出来に落差があったようにおもいます
助手役は、とてもやりにくそうな役でしたが、うまくこなしていました。綺麗な方であったこともあり、他の舞台での活躍もあればみたい女優さんでした
元々は、水野さん目当てで行きました
実は、この舞台は、昨年から始めたVALUで知った女優さん水野以津美さんの告知でしりました(彼女のVALUを買っているので)
というわけで、彼女がどのような演技をするのかを楽しみに行きました
まさかのメガネ女子設定。しかも、喪服を着ていることもありあまり派手な印象のない抑えた演技をされていました
ちょっと見せ場がなかったのは残念でした(今回の脚本上しょうがないし、無理やり見せ場を作られても困るのですが)
思ってたより、キリッとした演技をするひとなんだなと感じました。舞台によって印象がかわるだけかもしれません。また、見に行けたら見に行きたいと思います
ドグラ・マグラか、エンゼル・ハートか
今回観に行くにあたって、もうひとつ参考にしたのは、超絶観劇量を誇るじべさん( @chihitsudo )さんがCoRich舞台芸術のコメントを読んだのも後押しになりました
あれこれバランスも良くて完成度高し
箱庭療法を施されている記憶を失っているらしき青年は家族を殺した過去があるようで…な物語。
序盤から夢野久作の「ドグラ・マグラ」風味でミステリアスな雰囲気が立ち込めて引き込まれる。
そうして謎とミスリード要素、謎解明のヒント(←後から気付く:例えば医師の助手が「あんな格好」をして(させられて)いるのとか)をちりばめての70分、ダークで救われない結末なのにダンスや音楽の使い方も巧いし舞台美術もセンスが良いし結果的に引き込まれっ放し。
青年の家族を殺したのは誰か、とか誰のための箱庭療法か、とかもよく出来ているし、あれこれバランスも良くて完成度高し。
いや、恐れ入りましたぁ。
結構、期待し行ったのですが、期待しすぎだったのかもしれません
物語全体としては、ドグラ・マグラを思わせるというのは確かに感じました。記憶が書き換えられているあたりは、ミッキー・ロークの映画の「エンゼル・ハート」を思い出させる所もありました
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記憶が錯綜し、ミステリアスな設定になるあたりが、そういった物語を思いおこさせるだけかもしれません
アングラは嫌いじゃないのですが、なんか安易に感じます
精神科医とか、記憶喪失とか、割りと嫌というほど観てきたアングラ芝居で、逆に作者が求めている不思議な世界へのいざないを感じることもなく、ここから何を裏切ってくるのか…と楽しみにしていたのですが…何もなく
そもそも、白衣、ウェディングドレス、喪服というセットは、メッセージ性が強すぎて物語に集中できません
もう少しフランクにしないと舞台が重苦しくなりすぎると感じました
前半の一人のキャラクターを複数の人間で演じ分けたり、台詞をあわせたりもなんかな。とってつけたような感じ
アングラ芝居に親近感があるが故に逆にアラが見えてしまうというところです
以上 劇団えーてぃーふぃーるどの「314公演『蜜柑星人-或いは終末期的箱庭療法-或いは白と黒の深淵』」の感想文記事でした
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