[書評]ダン・シモンズ「ハイペリオンの没落」

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ハイペリオンシリーズの第2作品。やはり再読ですが、実は前回読んだ時の印象がほとんど残っていない作品でした。ほぼ、初見のような気持ちで読むことができました。

前作「ハイペリオン」の主役であった6人の巡礼のその後の物語。今回の語り部は、「コア」が創りだしたジョン・キーツの人格をベースとしたサイブリッ ド。

このサイブリッドが、夢の中で巡礼の一人レイミアの行動が見えるという特殊能力を持つ事から、巡礼達の様子と「連邦」の最高経営責任者(CEO)のマイナ・グラッドストーンの様子の両方が語られる形で物語が進みます。

この辺りの設定のうまさは、さすがだなと感じました。

そして、ハイペリオンではほとんど動かなかった物語が一気に進み始めます。まさに怒涛の如く。

この物語で、僕は巡礼達の様子よりも、このCEOマイナ・グラッドストーンに相当肩入れしながら読みました。エイブラハム・リンカーンにその面影が似ているという彼女の葛藤や逡巡が、ストーリー全体の基調を作っていました。

勿論、領事の隠された秘密の任務、宿敵アウスターたちの本当の姿、人工の知性体「コア」の本当の目論見など、この物語で語られる真相は、前作を読んでいた中で「?」「!?」となっていたものを解消させてくれてとてもすっきりすることが出来たのも、この物語の効用の一つでしたが、マイナ・グラッドストーンという魅力的な登場人物に惹き込まれたというのがこの物語の最大の印象でした。

彼女の最後の決断による連邦の崩壊の凄まじさも、印象的でした。読み終えた時に、「一区切り」がついたなと安堵のため息がつい口に出てしまいました。

 

しかし、まさかレイミアがあんなに重要な役回りだとは夢にも思いませんでした。正直、「ハイペリオン」の方では、彼女の物語の部分あまり印象に残っておらず、「ハイペリオンの没落」で、役目の重要度が上がってきて、その物語(探偵の物語)の部分を再度読み返す必要がありました。(おそらく、ジョン・キーツにとってのレイミア(Lamia)という作品の重要度がわかっていればピンと来たのだと思いますが)

それでも、まだ物語は完結していません。時代を下っての新しい物語「エンディミオン」のシリーズが待っています。

ハイペリオンの没落(上)
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ハイペリオンの没落(下)
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